21世紀COE・次世代ユビキタス情報社会基盤の形成
第七回シンポジウム
ユビキタス情報社会を支える技術・政策・産業

開催概要

日時
平成17年6月29日(水)14:00~17:30
会場
東京大学大講堂(安田講堂)
主催
東京大学大学院情報学環・学際情報学府学際情報学専攻
総務省

プログラム

13:30~
受付開始
14:00~
開会挨拶
浜田 純一(東京大学・副学長・理事)
高原 耕三(総務省総務審議官)
14:15~
基調講演「ユビキタスコンピューティング技術とユビキタス情報社会の実現にむけて」
坂村 健(東京大学大学院情報学環・副学環長・教授)
東京大学21世紀COE「次世代ユビキタス情報社会基盤の形成」拠点リーダー
15:15~
講演「u-Japan政策の実現に向けた研究開発の推進」
鬼頭 達男(総務省技術総括審議官)
15:45~16:00
休憩
16:00~
パネルセッション「ユビキタスネットワーク社会の実現にむけて」
コーディネータ:
道傳 愛子(世界情報社会サミット(WSIS)親善大使・NHKチーフアナウンサー)
パネリスト:
飯塚 久夫(株式会社NTTコミュニケーションズ・常務取締役・先端IPアーキテクチャセンタ所長)
鬼頭 達男(総務省技術総括審議官)
寺﨑 明(独立行政法人情報通信研究機構・理事)
須藤 修(東京大学大学院情報学環・教授)
坂村 健(東京大学大学院情報学環・教授)
17:20
閉会挨拶

ごあいさつ

21世紀、人間社会のあらゆる場面においてデジタル化された情報を活用するユビキタス情報社会へと向かおうとしています。ユビキタス情報社会を形成するために、まず必要なことは、最先端のコンピュータやネットワークなどの情報通信技術です。特に、RFIDやセンサーネットワークなどの超小型デバイス、ユーザフレンドリなユーザ端末、無線通信技術、コンテキストアウェアな情報サービス技術、セキュリティー技術などが重要です。更に、これらの技術を推進するためには、行政による科学技術振興政策、また産業界による先端技術の実用化・産業化といった取り組みも上可欠です。

近年ユビキタス技術を活用した未来の日本社会に対するu-Japan(Ubiquitous Japan)構想も提案されています。本シンポジウムでは、主にユビキタス技術に焦点を当てつつ、ユビキタス情報社会に向けてそれぞれに役割を担った産官学民が結集し、特にユビキタス技術の現在と将来への展望を議論したいと思います。

坂村 健
21世紀COEプログラム
「次世代ユビキタス情報社会基盤の形成」拠点リーダー
東京大学大学院情報学環教授


基調講演
「ユビキタスコンピューティング技術とユビキタス情報社会の実現にむけて」


坂村 健
東京大学大学院情報学環・副学環長・教授
東京大学21世紀COE
「次世代ユビキタス情報社会基盤の形成」拠点リーダー

概要

現在、状況認識技術(Context-awareness)を中核とする新しい情報分野としてユビキタスコンピューティングの研究が世界的な大きな潮流となっている。ユビキタスコンピューティングは、我々が1984年に開始したトロンプロジェクトの技術目標に掲げた「どこでもコンピュータ」コンセプトの国際的呼び吊の一つである。こうした経緯もあり、我が国は本分野において世界を先導しうる技術水準を有する。しかし、学術分野・産業分野双方で世界的に活発な研究開発がなされており、本分野の重要性は現在の世界的な共通認識となっている。そのため、本分野の研究の推進は、激しい国際競争の中で遅れをとらないためにも必須のものである。ユビキタスコンピューティングの適用分野は多岐にわたり、既に農学、医学、薬学、地理学、生物学等の諸学問分野をはじめ、災害支援や社会安全の実現、国土産業社会インフラ等の国家レベルの施策への適用も期待されており、本分野の研究レベルや技術競争力の低下は、我が国の将来の国力低下に直結する。したがって、ユビキタスコンピューティング分野の研究教育を積極的に推進することは緊急度と重要度が極めて高い。そこで、東京大学大学院情報学環が核となり、東京大学はユビキタスコンピューティング技術やそれを様々な分野に適用する研究や、当該分野の人材育成を行う教育のための拠点として、文部科学省21世紀COEプロジェクトを平成16~20年度の5年計画で実施している。

本プログラムでは、成熟した情報社会の21世紀型の究極形であるユビキタス情報社会を先導することを目的として、概念形成や基礎理論、工学的技術や社会応用にわたり、情報学を核として計算機科学や認知科学、社会情報学、経済学、法学、社会学、歴史学、文化研究が連携し、幅広い学際研究を推進する世界最高水準の研究・教育拠点を形成しようとしている。ユビキタス情報社会とは、人類社会を形成するあらゆる分野や場面において、情報技術により生み出されたデジタル情報、特に状況認識技術によって得られたコンテキスト情報を活用した、効率的で効果的な情報サービスを行い、それによって人間生活の質の向上に資する社会である。その基盤となる学術研究を、本拠点は実施しているのである。

ユビキタスコンピューティングにおいては基礎技術研究と制度研究が必要である。全体が社会規模の巨大システムであり、多様な基礎技術を組み合わせてシステムを開発し、運用を含めて体制を構築してはじめて全体イメージがみえるようになる。そのため、本プロジェクトでは応用研究を行いその中で特に実証実験を重視したいと考えている。

実証実験の結果はシステムの実運用時の課題を明確にする。設計時から、運用サイドや社会との関係をもち、利用者の意見を広く取り入れることで、技術設計や制度設計に対するフィードバックを与える。またこれにより、実現イメージを広く知ってもらい社会的なコンセンサス醸成のためのはたらきかけとなるとともに、研究の説明責任の一環としても重要な意味をもつ。ユビキタスコンピューティングの基礎自体は、広く応用できる汎用情報インフラとして設計することがポイントである。いくら望まれる目的のためであっても、救急車「だけ」を通すための道路がありえないように、社会規模の巨大システムは特定応用のためでは社会コスト的に成立し得ないといえる。しかし、このような汎用的なインフラであるからこそ、明確な応用イメージをもって開発しないと課題がみえてこないし、社会的な認知も得られない。

社会により密着するユビキタスコンピューティングは、社会に対する影響もより大きく、また万が一問題が起こった場合の被害も短期間に極大化することが十分考えられる。そのため、電話やインターネットの轍を踏むことなく、それらの失敗例を参考にして避けるべき問題を避けるように、技術・制度両面での設計が為されなければならない。そのためにも、応用研究を基礎研究と並行して、それを社会にオープンにし、広く周知を集め相互にフィードバックして進めるという、21世紀型の新しい研究スタイルが望まれるのであり、本COEプログラムでは、こうした研究スタイルを確立することも目指している。


講演
「u-Japan政策の実現に向けた研究開発の推進」


鬼頭 達男
総務省技術総括審議官
郵政省(現・総務省)に入省後、電気通信局電波部移動通信課長、通信政策局技術政策課長等を歴任し、2001年から総合通信基盤局電波部長を務め、電波開放戦略を推進した。2003年から技術総括審議官に就任し、情報通信分野の研究開発・標準化政策、宇宙通信政策の企画・立案を総括している。現在は、ユビキタスネット社会に向けた研究開発戦略及び宇宙通信戦略の策定、ユビキタスネットワーク技術、電子タグの利活用技術等の重要技術に関する研究開発の推進、次世代ネットワークに関する国際標準化の推進等を担当している。

概要

我が国は、経済活動における国際競争の激化、本格的な少子高齢化社会の到来等、多くの課題に直面している。このため、総務省は、今後の社会基盤として定着しつつあるICTの利活用により、これらの課題を解決するために、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークに簡単に繋がるユビキタスネット社会を実現することを目指して、u-Japan政策を昨年12月に打ち出したところである。

u-Japan政策の実現に当たってはICT分野の研究開発の推進が上可欠であり、u-Japan政策によって目指すべき社会、及びそのような社会の実現に向けた研究開発戦略について述べてみたい。また、電子タグ等のユビキタスネット社会の実現のために重要となる技術の研究開発プロジェクトを推進しており、総務省の総合的な取り組みを紹介し、パネラー、参加者の皆様と意見交換することで、我が国の将来の発展ビジョンを共有したい。


パネルセッション
「ユビキタスネットワーク社会の実現にむけて」

コーディネーター
道傳 愛子
パネリスト
飯塚 久夫(株式会社NTTコミュニケーションズ・常務取締役・先端IPアーキテクチャセンタ所長)
鬼頭 達男(総務省技術総括審議官)
寺﨑 明(独立行政法人情報通信研究機構・理事)
須藤 修(東京大学大学院情報学環・教授)
坂村 健(東京大学大学院情報学環・教授)


道傳 愛子
NHKチーフ・アナウンサー
上智大学外国語学部英語学科卒業後、NHK入局。
コロンビア大学大学院国際政治修士。
「NHKおはよう日本」、「NHKニュース9」などを経て、02年までタイ特派員として東南アジアを取材。アジアでは、各国の政治・経済を日本との連関でリポートするとともに、途上国におけるデジタルディバイドの現実や、ICTがもたらす変化についても取材。現在は「NHK海外ネットワーク」(日曜夕方6時10分~6時45分)を担当。2005年11月の世界情報社会サミット(WSIS)日本政府親善大使。

概要

11月にチュニジアで開催される世界情報社会サミット(WSIS)は、情報社会についての共通ビジョンの確立と、そのビジョンの実現を図るための国連行事です。国連決議にも、ミレニアム開発目標(MDG)に掲げられている目標達成に向けて、ICTはすべての人のために活用されるべきだとあります。5月の「東京ユビキタス会議」では、ユビキタス社会の実現に向けた具体的な方策や課題について議論が重ねられました。私は「デジタル・ディバイド解消に向けて」の分科会のモデレーターを務めました。放送もまたICTの一つです。情報格差のない社会の実現を。日本の情報を世界に、世界の情報を日本に。技術・内容ともに質の高い放送を届けるという放送局の使命はWSISの取り組みとも重なると感じています。シンポジウムでは、ユビキタス社会の実現に向けてどう取り組んでいくのか、市民社会の役割も考えながら産業界、大学、研究機関、政府のそれぞれの立場の方々からお話をうかがいたいと考えています。


飯塚 久夫
NTTラーニングシステムズ(株) 代表取締役社長
昭和47年日本電信電話公社入社。以来、電子交換機開発、通信網技術の標準化、NTT民営化計画の策定、資材調達業務、マルチメディア構想の策定、マルチメディアビジネス、インターネット事業の立上げなどに従事。特に平成11年以降は、NTTコミュニケーションズ(株)常務取締役として、ビジネス向けインターネットサービスの普及・拡大、IPv6や通信放送融合などブロードバンド/ユビキタス時代のコアとなる技術・サービスの開発に取組む。また、平成14年から16年にかけて同社のCSO(Chief Security Officer)として同社セキュリティの統括業務、セキュリティ関連技術の研究開発・ビジネス展開を推進した。JPNIC理事、IAjapan理事、TelecomISAC Japan副会長、情報通信審議会委員などインターネット発展へ向けた各種活動へも積極的に関わる。平成17年6月より現職。
昭和45年東北大学工学部卒業。昭和47年東京工業大学理工学研究科修士課程修了。
電子情報通信学会会員。著書「コミュニケーションの構造」(NTT出版)など。


寺﨑 明
独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)理事(企画担当)
過去において取り組んできたことは、ファクシミリの国際標準化のサポート、電気通信事業者のネットワークの技術基準の策定作業、携帯電話の周波数に関する日米貿易摩擦の解消作業、携帯電話のデジタル化のプログラムの策定とその推進、PHSのアジアへの展開、列島縦断型研究開発用超高速ギガビットネットワークの実現、地域情報化の促進(北陸に於いて)、ブロードバンド・デジタルコンテンツの普及活動などを行ってきました。現在は、今までの経験を生かし、昨年の4月にリニューアルして発足したNICTの企画戦略等を担当しています。

概要

インターネット、携帯電話、ハイビジョンなど新しいサービスは、実は、それぞれ、20年から40年の研究開発の成果である。地道な研究活動があったことを忘れてはならない。ユビキタスネットワーク社会の形成に向けたNICTにおける今後の取り組みについてポイントを3つ示したい。1つ目は、産学官の連携の中核となるような大規模開発研究施設、オープンテストベッドの構築である。2つ目は、それらを活用した基礎から応用までの一貫した研究開発と社会展開の促進であり、そのために、新しい産業基盤、新しい電気通信サービスの登場に対して積極的な支援を行っていくことである。3つ目は、あらゆる物的・人的資源を結集・駆使した「知の創発」ネットワーク・テストベッドによる先端的な研究開発を産学官三位一体で推進するということである。

研究開発から「種」を生み出し、世界市場の中で、日本がリードできる形で「実」を創っていく活動を積極的に推進していくことが我々の立場だと思っている。


須藤 修
東京大学大学院情報学環・教授、経済学博士
専攻は、情報経済学、社会情報学、環境経済学だが、1990年代より、電子政府・電子自治体、電子決済(電子マネー)、電子商取引、電子認証などの研究を行い、政策立案に関与してきた。現在はユビキタス・ネットワークを有効に活用するe-Community構築に向けた研究に力を注いでいる。内閣府「国民生活審議会」委員、総務省「電子自治体のシステム構築のあり方に関する検討会」委員長、内閣府「内閣府レガシーシステム業務・システム最適化計画検討会」座長、岐阜県IT顧問などを兼務。なお、須藤修が副会長をしているタイムビジネス協議会は、時刻認証の研究・開発及び普及活動によって総務大臣表彰を受けている(2004年10月)。主要著書として単著『複合的ネットワーク社会』(有斐閣、第11回電気通信普及財団賞[第11回テレコム社会科学賞]受賞)、編著Digital Economy and Social Design, Springer-Verlagなどがある。

概要

高齢化が進行すると、ユニバーサル社会基盤(障害をもった人々にも健常者と同じような行動ができる社会空間)の整備が求められるが、その際、介護ロボット(センサー技術)やユビキタス・ネットワークを積極的に活用した住宅や街づくりが重要になる。いまユビキタス・ネットワーク、センサー技術の研究成果が実社会に応用されようとしている。

介護ロボット(センサー技術)やユビキタス・ネットワークを積極的に活用した社会インフラを積極的に整備しようとすると、蓄積され、かつ絶えず更新されるデータベースが必要上可欠になる。その膨大なデータをどのように管理するのか。大量の個人情報が収集、蓄積され、かつネットワーク上を飛び交うわけだが、個人情報の利活用と保護はどのように両立すべきなのか。事故や災害、上正行為に対するリスク管理はいかにあるべきか。いまやテクノロジー提供者とその利用者の新たな関係の創造が求められている。そのためには、信頼しうる第三者機関のモニタリングと評価を用いたe-Communityに関する理論的かつ実証的研究が必要になる。


東京大学大学院情報学環・学際情報学府学際情報学専攻
21世紀COE・次世代ユビキタス情報社会基盤の形成
第二回 ユビキタス場所情報システム・シンポジウム
発行 2004年11月16日

Copyright © 2004 by
Interfaculty Initiative in Information Studies
Graduate School of Interdisciplinary Information Studies
The University of Tokyo

 

 

 

 

 
 
 
 
           
 
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